No.104
「猫インフルエンザ」は鳥インフルが変異
東大研究グループが研究成果を発表
近年鳥インフルエンザの流行が世界的に広がっていますが、そんな中2016年冬にはアメリカ・ニューヨーク市の動物保護施設で2匹の猫が高熱を発して死亡。さらに、施設内の猫45匹をはじめとする同市内で保護された猫386匹にくわえて、治療にあたった獣医師一人もインフルエンザウイルスの陽性反応を示しました。これまで猫特有のインフルエンザウイルスの報告はなく、全米に衝撃が走りました。
このウイルスを詳しく解明するため立ち上がったのが東京大学河岡義裕教授らの研究グループです。同グループは同ウイルスの哺乳類への感染伝播実験を実施。その結果、ウイルスが1990年代後半から2000年代初めにかけてニューヨーク近郊の養鶏市場で発生したH7N2鳥インフルエンザウイルスに由来することを突き止めたことを昨年12月発表しました。
哺乳類に感染しやすく変異し注意が必要
鳥インフルエンザウイルスは哺乳類には感染しにくいといわれますが、研究グループが同ウイルスの哺乳類への伝播メカニズムを実験で調べたところ、哺乳類の呼吸器内で増殖しやすく、猫間でも感染しやすいように変異。接触感染やくしゃみなどの飛沫感染によって他の猫に伝播するとともに、哺乳類のフェレット同士でも接触によって伝播することが明かになりました。
ただし猫でフェレットも重篤な症状は示さず、既存のタミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬が有効であることも判明。研究成果は米「Emerging Infectious Diseases」オンライン速報版に掲載されました。
今回の研究成果は、ペットとしてヒトと接する機会が多い猫を介して鳥インフルエンザウイルスがヒトや哺乳類に伝播する可能性を示唆しており、鳥インフルエンザウイルスの中間宿主としての猫の監視が必要となると研究チームは指摘しています。