犯人は花粉に過剰反応した「ヒスタミン」
今年の花粉の飛散量は、昨夏の猛暑によってスギ雄花の成長が促進されたため、例年を大きく上回り、昨年比5倍から10倍といわれています。
国民の3人に1人が患っているといわれる花粉症ですが、医学的には「アレルギー性鼻炎」の一種。通年性と季節性に分けられ、花粉症は季節性です。季節性のアレルギー性鼻炎の抗原としてはスギ花粉が代表的。抗原に反応した「IgE抗体」によって炎症物質の「ヒスタミン」が鼻などの粘膜に放出され、くしゃみ、鼻水、鼻つまり、涙、のどや眼のかゆみなど、さまざまな症状を呈します。
花粉症の治療方法は、「抗アレルギー薬」や「ステロイド薬」の投与が一般的です。そのほか「レーザー治療」は、鼻の粘膜を焼いて固くする治療方ですが、痛みもほとんどなく、かさぶたも1週間ほどで改善します。「カプサイシン」(トウガラシの辛味成分)を鼻の粘膜に塗る治療は、粘膜のヒスタミンへの反応が抑制されてくしゃみや鼻水が抑えられ、副作用もありません。
最新の花粉症治療
近年さまざまな最新花粉症治療が行われています。
SLIT(スリット)減感作療法(舌下減感作療法)は、スギ花粉を含むエキスを毎日口にたらすことで免疫力を高めます。根本治療が期待できるうえ副作用もほとんどなく、WHOや世界各国で医学的に安全かつ有効な効果を持つとして認められた治療法です。自宅でも治療が可能なため、通院も数週間おき程度ですが、保険適用外なのが残念なところです。
保険適用の治療法としては、「ソムノプラスティ」[正式名:「高周波電気凝固法下甲介(かこうかい切除術)」]があります。鼻づまりの原因となる下甲介という部分に針を刺して高周波で固めるもの。非常に細い針を使うので痛みもなく、鼻づまりに高い効果が期待できます。
また、最新のレーザー治療法、ミディアムレア(MLLT)も保険が適用されます。通常より温度の低い50度前後のレーザーで鼻粘膜が変性する直前まで治療するものです。 わずか数分ですみ、効果も通常のレーザー治療と変わらず1年以上持続します。
さらに、光を使った「リノライト」治療は、鼻の粘膜に紫外線を当てることでアレルギー細胞の増加を抑制します。副作用も少ないので安心です。
一方、実用化が待望されているのが「花粉症ワクチン」です。すでに、遺伝子工学によって2種類のスギ花粉の抗原の合成に成功しており、動物実験でその効果は実証済みです。ワクチンによってアレルギーを起こす「IgE抗体」を抑制することで花粉症の根本治療が期待されています。