過酷をきわめる看護師の勤務実態
5月12日はナイチンゲールの誕生日にちなんだ「看護の日」。当日は市民による看護体験など、全国各地でさまざまな行事が行われました。現在看護師をはじめとする看護職は全国で130万人以上と言われていますが、その現場では、24時間勤務はもちろん、休日も取れぬまま数週間働き続けることも珍しくないなど、過酷な労働実態が問題となっています。
しかも、こうした過酷な勤務によって看護職を辞める看護師は増える一方。慢性的人員不足の現場では、残された看護師に重い負担がのしかかっています。忙しすぎて患者の世話も十分にできないばかりか、看護師不足で病院が閉鎖される事態まで引き起こしているのです。
こうした看護の現場における過酷な勤務実態の背景を探れば、看護師の多くの業務が診療報酬の保険点数の対象外で、人件費高騰を恐れる経営側が看護師の増員を躊躇。慢性的看護師不足を引き起こしているという現実があります。
サービス残業蔓延。果ては過労死まで
2009年、こうした過重労働による看護師の過労死判決が大阪などで相次いだことを受け、日本看護協会は交代制勤務に携わる看護師約1万人を対象にした時間外勤務の実態を初めて調査しました。
その結果、時間外勤務の平均は月23.4時間。過労死レベルとされる月60時間以上の時間外勤務をしている看護師も、回答者の2.5%を数え、全国では推定2万人が月60時間以上の時間外勤務をしていることが明らかになりました。
中には月150時間もの時間外勤務をした看護師もいたといいます。さらに、慢性疲労の自覚症状についての調査でも、時間外勤務の割合がもっとも高い20代では7項目中4項目以上にイエスと答えたのが4割と、過重労働による看護師の疲労振りが浮き彫りになりました。さらに、時間外勤務のうち病院側に申告したのは平均8.3時間と、サービス残業の蔓延も明らかになっています。
こうした状況下で、多くの看護師が医療事故への不安を抱いており、若年層の看護職離れで今後さらなる看護師不足が懸念されるなど、早急な対策が求められています。