カラダの健康トピックス

医療
2018/03/01

No.105
ペットとじゃれ合うのはご用心

ペットから感染する「パスツレラ症」

世はペットブーム真っ盛り。家族の一員としてじゃれ合うのはもちろん、顔をなめられたり、キスをしたりは当たり前のご家庭も多いと思います。しかし、愛するペットとのそうした接触が思わぬ危険を招いてしまうことをご存知ですか?
それが「パスツレラ症」です。これまでこの病気についてはほとんど知られていませんでしたが、最近になって患者数が急増しているのです。
パスツレラ症はもっとも患者数が多い動物による感染症の一つで、パスツレラ属菌の感染によって発症します。パスツレラ属菌は哺乳類の口腔や爪、上気道や消化器などに常在菌として存在、猫の口腔で約97%、犬のそれでは約75%の保菌率といわれます。自分の体をよくなめる猫の爪には約20%保菌されているといわれ、ペットを飼う人は注意が必要です。パスツレラ属菌の感染経路は、犬猫に咬まれたり、引っかかれたりした傷からの経皮感染や、顔を嘗められたり、キスしたりなどによる経口感染が主ですが、つばなどからの飛沫感染も報告されています。

免疫力が低いと感染しやすく、死亡する例も

パスツレラ症の症状は皮膚と呼吸器が主で、ペットとの接触の際に菌を吸い込んで感染する呼吸器症状が約60%を占め、喉の痛み、鼻腔や耳の炎症、肺炎や気管支炎などを発症します。一方、皮膚症状は約30%で、犬猫に咬まれたり、引っかかれたりした傷からの感染後1時間から2日ほどで傷周辺が赤く腫れて化膿、痛みや発熱を伴うこともあります。さらに、炎症が広がって蜂窩織炎(ほうかしきえん)を引き起こしたり、リンパ節が腫れたり、関節炎を起こすこともあります。
とくに高齢者や糖尿病、喘息、結核、免疫不全、がんなどの基礎疾患によって免疫力が低下した人は感染しやすく、慢性化したり、重症化したりして敗血症や骨髄炎などを引き起こして死亡する例もあります。
ちなみに、犬や猫は感染してもはっきりした症状を現わしませんが、猫が肺炎や皮膚病を起こすことがたまにあります。
パスツレラ症の予防はペットとの過剰な接触を控え、接触後は手を洗ったり、うがいをしたりしましょう。犬や猫の爪は頻繁に切って常に清潔にし、引っかかれたり、咬まれたりしないように注意。室内飼育なら安全ですが、野外での感染には気をつけましょう。
治療は引っかかれた傷口を水でよく洗い流してから消毒し、感染した場合は医師に相談してください。治療はペニシリン系などの抗生物質が有効です。

TOP >> カラダの健康トピックス >> 記事