カラダの健康トピックス

医療
2015/09/01

No.75
温暖化で「脳を食べるアメーバ」が北上

河や湖などに生息、温泉にも

今年7月、アメリカ・ミネソタ州のミネワスカ湖で泳いでいた10代の少年がアメーバによる「原発性アメーバ性脳髄膜炎」に感染。危篤状態に陥って、死亡しました。
原発性アメーバ性脳髄膜炎は「ネグレリア・フォーレリ」というアメーバを原因とする髄膜炎です。ネグレリア・フォーレリは淡水の河や湖沼、温泉などに生息するアメーバで、25度以上の温水を好むため、アメリカでは通常は南部に生息。これまで全米で年間最高8人程度だった原発性アメーバ性脳髄膜炎による死者もほとんどが南部での発症で、今回のように北部で発症した例はまれでした。
アメリカ疾病対策センター(CDC)によれば、近年の地球温暖化によってこれまで南部に限られてきたアメーバの生息地域が次第に北上しつつあるといい、全米に衝撃が広がっています。
ネグレリア・フォーレリに感染するのは気温が高く、アメーバの活動が活発になる夏が多く、湖や河などで泳いでいる際に鼻の奥に入った水に混じって、体内に侵入。神経系をたどって脳に達すると、すさまじい勢いで脳細胞を破壊したり、溶かしたりして、脳を形状を保てないほどどろどろにしてしまうことで、「脳を食べるアメーバ」と恐れられています。

致死率は95%以上!かかったらおしまい

原発性アメーバ性脳髄膜炎の初期症状は発熱、頭痛、吐き気などで、進行すると精神攪乱に陥って幻覚症状などを引き起こし、発症から1週間ほどで死に至ります。原発性アメーバ性脳髄膜炎に感染するのは非常にまれですが、感染した場合の致死率は極めて高く、アメリカで同脳髄膜炎と診断された患者134人のうち生き延びたのはわずかに3人でした。
ネグレリア・フォーレリなどのアメーバ類はアメリカをはじめとする世界中で生息しており、湖や川、温泉やプールなどどこにでもいて、水道水から感染した例もあります。過去に国立感染症研究所が行った調査では、対象となった温泉などの温浴施設の60%以上で原発性アメーバが発見されており、うち約9%はネグレリア・フォーレリでした。
原発性アメーバ性脳髄膜炎の感染例は日本にもあり、1996年には佐賀県の女性が高温を発して昏睡状態に陥って死亡。髄液内に原発性アメーバが発見されましたが、感染経路は不明でした。
困ったことに原発性アメーバ性脳髄膜炎に対する有効な治療法はいまだにないのが現状です。このため、わたしたちができる予防としては、アメーバへの感染を防ぐことだけ・・水温が高い湖や川、温泉などでは、なるべく顔を水に浸けないようにして、アメーバへの感染を防いでください。

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