カラダの健康トピックス

医療
2014/12/12

No.66
がんに栄養補給する血管を作る遺伝子を発見

新たな抗がん剤開発への救世主

三重大学の研究グループはこの9月、がん細胞に酸素や栄養を補給する血管を作り出す遺伝子を新たに特定。研究成果をヨーロッパ生化学学会学術誌(電子版)に掲載しました。
同遺伝子の働きを阻害することで、がん細胞の増殖を抑える効果が予測され、新たな抗がん剤開発への期待が高まっています。
新しい血管を作る「血管新生」は、怪我が治るときなど以外は勝手に起こらないように普段は制御されています。ところが、がん細胞は酸素や栄養を取り込むための血管を持っていないため、勝手に新しい血管を作って酸素や栄養を取り込んで成長。ついには体中に転移してしまいます。
そのため、こうしたがん細胞による血管新生を阻止することができれば、がんに酸素や栄養が補給されなくなって、がんの増殖を抑えることができることになります。

がん細胞の血管新生にかかわる遺伝子を発見

血管新生には「血管内皮増殖因子(VEGF)」という遺伝子が関わっていることがこれまでに分かっており、その働きを阻害する薬も開発されています。しかし、高血圧や血栓などの副作用や、効果が出ないケースもあるなど、これ以外の選択肢となる抗がん剤の開発が待ち望まれていました。
今回三重大大学院医学系研究科の田中教授らの研究グループは、人間に遺伝子配列が近い小型の熱帯魚「ゼブラフィッシュ」に前立腺がんの細胞を移植する実験を行いました。その結果、「ZMYND8」という遺伝子が増えることで血管新生が起きやすくなり、この遺伝子の働きを試薬で妨げると血管新生の発生が減ることが明らかになりました。人のへその緒の静脈細胞を使った実験でも、同様の結果が得られたということです。
今回の実験では副作用の報告もなく、ZMYND8遺伝子の働きを阻害する抗がん剤が開発されれば、既存の抗がん剤が効かなかったり、副作用に悩まされていた患者などにとって新たな選択肢になりうると期待されているのです。

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