カラダの健康トピックス

医療
2014/07/18

No.61
アレルギー反応を起こすたんぱく質を解明

ヒスタミン制御タンパク質の特定は世界初

九州大学生体防御医学研究所の福井宣規教授らの研究グループは、アレルギー反応を引き起こす化学物質の放出を制御するタンパク質を世界で初めて突き止めることに成功。2014年6月9日付け米科学雑誌「Journal of Experimental Medicine」(電子版)に成果が掲載されました。
花粉症、ぜんそく、アトピー性皮膚炎などのアレルギー反応は、白血球の一種であるマスト細胞が、体内に入ってきた花粉などの異物に反応して抗原抗体反応が暴走。ヒスタミンなどの物質を細胞から放出する反応(脱顆粒反応)を起こして、くしゃみ、鼻づまり、咳、かゆみなどの症状を引き起こします。しかし、これまでマスト細胞がアレルギー反応を引き起こすことは知られていましたが、マスト細胞内の詳細なメカニズムは未解明でした。

発症そのものを防ぐ夢の新薬開発に光明

研究グループはマスト細胞内で物質を運ぶ器官(微小管)を制御している「DOCK5」と呼ばれるタンパク質を特定。DOCK5をなくしたマウスを使った実験で、アレルギー反応の過程で微小管の働きが抑えられ、マスト細胞がヒスタミンを放出できなくなることを突き止めました。
現在アレルギー治療にはヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン剤を使った対症療法が主流ですが、その効果は限定的で根本的な治療法はいまだにないのが現状です。そのため、アレルギー反応を引き起こすマスト細胞内のメカニズムを明らかにすることで、アレルギーを根治する薬剤の開発が待ち望まれていました。
そんな中、今回の研究でマスト細胞内の特定のタンパク質がアレルギー反応を引き起こすヒスタミンの放出に関わっていることが明らかになったことで、このタンパク質の働きを抑えてアレルギー反応を根元から断つことのできる新薬の開発につながるものと期待されています。

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